最近獣医師さんから愛犬の肝機能が落ちている、もしくは肝臓病ですねと言われた方はいらっしゃいますか?
肝臓というのは、とても大切な臓器です。しかし肝臓が悪くなったと言われても、具体的に何がどう悪くなっているのか、どんな症状があるのか、知識がなければイメージするのが難しいものでもあります。
こちらの記事では、そもそも肝臓とはどのようなもので悪くなるとどのような不具合が生じるのか、そして肝臓が悪い愛犬にどのような食事を与えれば良いのかをご紹介していきます。
犬の肝臓の役割とは?
まず初めに犬の肝臓にどのような働きがあるのかを知ることからスタートしましょう。
肝臓の働きは主に3つあり「栄養素の変換および貯蔵、毒素の分解(解毒)、胆汁の生成」となっています。
栄養素の変換および貯蔵
犬は人間と同じく小腸から栄養を吸収しますが、摂取した栄養素はそのまま使用はできません。
なので、この栄養素を分解したり活性化したりして使える栄養素に変えるのが肝臓の役目の1つとしてあります。
毒素の分解(解毒)
フードの中に含まれている毒素(添加物や体に不要な栄養素)になりうるものであったり、1つ目の機能で説明した栄養素の変換の過程で発生する毒素(アンモニアなど)の分解を行うのが肝臓の2つ目の機能になります。
胆汁の生成
胆汁とは脂肪やタンパク質を分解して体に吸収しやすくする必要不可欠な消化液になります。
この胆汁を作っているのも肝臓の大きな役割です。
肝臓病の種類 / 症状
肝臓の主な役割をおさえたところで、次に肝臓病についてご説明します。
大まかに犬の肝臓病と呼ばれるものは以下のものが挙げられます。
・肝炎(急性、慢性)
・銅蓄積性肝障害
・胆管閉塞
・門脈体循環シャント
・肝硬変
このように肝臓病にもたくさん種類があり、症状や治療法も種類に合わせてたくさん存在します。
それでは、もう少し各肝臓病の特徴をおさえていきましょう。
肝炎(急性、慢性)
肝炎については人間の病気でもよく聞く名称なので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
文字通り肝臓の炎症です。
原因は感染症、中毒、自己免疫疾患など多岐に渡ります。
銅蓄積性肝障害
こちらはあまり聞きなれない病名ですね。
名称の漢字からおおよそ連想できるかと思いますが、代謝の異常によって、銅が体内に蓄積していってしまう病気です。
よほど銅が多く含まれるフードを長期間与えていたとすれば、後天的に発症してしまうかもしれませんが、発症のほとんどは遺伝的なものです。
胆管閉塞
胆管という胆汁を肝臓から小腸まで運ぶ管が、腫瘍(胆嚢粘液嚢腫)や胆石などが原因で胆汁の通り道が狭くなり、詰まってしまう病気です。
門脈体循環シャント
門脈と呼ばれる毒素を肝臓まで運ぶ役割の血管があるのですが、この門脈と全身を流れる血管を繋ぐ余分な血管が出来てしまうことで、毒素が肝臓を通らないため、処理されず、身体中に回ってしまう病気です。
後天性の場合もありますが、銅蓄積性肝障害と同じく先天的な原因が多い病気となっています。
肝硬変
こちらも人間の病気でよく聞く名前ですね。
肝硬変というのはあらゆる肝臓病による影響によって血流が悪くなり見た目が繊維のように変化してしまったものを指します。
症状別ドッグフードの選び方のポイント
肝臓は他の臓器に比べて再生がしやすい臓器で、再生させるためには「食べて必要な栄養素を補い、肝臓の機能を回復させる」ことが何より重要となります。
ただし、肝臓病の種類によって該当する栄養素を制限する必要があります。
この制限を判断軸として、症状別にあげるべきごはんの選び方を説明していきます。
食事療法をする場合は必ず獣医師に相談をしながら進めてください。
愛犬のためにも、体の状態や検査をして、納得できるまで話を聞きいて治療に臨みましょう。
軽度の肝機能の低下
特に症状はないけれど、健康診断などで、肝臓の数値が高いと言われた場合です。
このような軽度の肝機能低下は、栄養をなるべく摂取することが大切です。
肝臓病療法食を問題なく食べてくれるのであれば栄養素もきちんとコントロールすることができるので、療法食を与えて問題ありません。
しかし、療養食を中々食べてくれない場合があります。そのような場合、療法食にこだわる必要はありません。
「安定した量」を「安定した時間に食べられること」が最も重要なので、食べてくれないものを無理してあげないように注意してください。
食欲がない / 脂質代謝に問題あり
総コレステロール、トリグリセリドなど「中性脂肪の上昇」が見られる、胆管閉塞があるなどで脂肪が上手く代謝できない場合には、脂肪肝になる可能性があります。また、食欲がない場合も、肝臓に脂肪をため込んでしまうことがあります。
そうなってしまうと肝臓の血液の流れが悪くなって肝臓繊維化が進行し、肝硬変になってしまいます。また、肝臓の機能が低下して食欲不振、嘔吐、脂肪便などの症状が出てくることもあります。
このような場合は、肝臓病療法食ではなく、脂質の少ない消化器病用療法食をあげてください。
摂取する脂質を少なくすることで肝臓に脂肪がたまったり、消化不良になったりすることを防ぎます。
血中のアンモニア値の上昇
血中のアンモニアの上昇は脳にダメージを与え、肝性脳症を引き起こします。
肝性脳症は非常に危険な病気で、アンモニアによる痙攣などが起こり命に関わります。
食事はアンモニアの産生を出来るだけ抑えるために、タンパク質を制限してください。
そのため肝臓病用療法食ではなく、タンパク質を制限した腎臓病用療法食を使用します。
腹水が溜まっている
肝臓病が進むと肝臓が繊維化して硬くなり、肝臓への血液の流れが悪化し血液が血管から染み出して、お腹に水が溜まってしまうことがあります。
このような場合はナトリウムの制限が必要となります。
ナトリウムの制限ができる心臓病用療法食を与えてください。
銅蓄積病
前述した通り、症状が出るまで銅の多い食事をしていたのでなければ、銅蓄積病の原因は遺伝によるものと考えられます。
銅蓄積病には、銅の少ない肝臓病の療法食を使用してください。
しかし、注意をしなければいけないのは、銅というのはあらゆる食物に含まれていることです。
なので銅蓄積病の場合は普段何気なくあげているおやつにも注意をしてください。
【銅が多く含まれているもの】
レバー、煮干し、ゴマ、ナッツ類、大豆、玄米
【銅が少ないもの】
白米、ヨーグルト
どうしても療法食を食べない時は?
肝機能低下の項目で少し触れましたが、なかなか療法食を食べてくれないわんちゃんもいます。
肝臓の数値が高いだけで症状が出ていなければ、あげすぎに注意して普通のドッグフードをあげても全然問題ありません。
しかし、アンモニアやナトリウム、銅などの成分制限が必要な場合は、個別に症状や検査結果を見ながら対応する必要があります。
療法食を食べてくれない時は、動物病院の獣医師の先生に対応を相談してください。
まとめ
闇雲に肝臓病だから肝臓病療法食と考えて、療法食だけ無理して与えても、食べてくれなければ本末転倒です。
肝臓病の状態により肝臓病療法食を使った方が良い場合、そのほかの療法食を使った方が良い場合があります。
愛犬の状態をしっかり把握して状況に応じて使い分けましょう。
一番大切なのは、獣医師に相談をすること!体の状態や検査をして今の愛犬の状態を把握して、納得できるまで話を聞きましょう!