筋トレブームの中で、栄養豊富な野菜として注目されているブロッコリー。
そんなブロッコリーを、愛犬に与えてもいいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
今回は獣医師の私が、ブロッコリーの栄養素や与える量、注意点などについて解説していきます。
犬はブロッコリーを食べても大丈夫!
ブロッコリーは、安心してワンちゃんに与えることができる食材の一つです。
頭の部分だけでなく、芯やスプラウトも栄養があるので取り入れてみましょう。
部位別に与えるときのポイントについてお話します。
つぼみ
ふさふさしたブロッコリーの「頭」の部分です。
茹でてみじん切りにすると消化しやすくなります。
茎
ブロッコリーの茎は硬いので、外側をむき、茹でてみじん切りにして与えましょう。
食物繊維が多いので、便秘のワンちゃんにぴったりです。
スプラウト
スプラウトとは、発芽して3日目くらいの新芽の総称です。
これから成長するものなので、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。
茹でても良いですが、細くて柔らかいので、細かく刻めば生で与えても大丈夫です。
ブロッコリースプラウトは、辛みがほとんどないため、野菜が苦手なワンちゃんでも食べやすく、初めて野菜を与えるときにもおすすめです。
ブロッコリーに含まれる栄養素
ブロッコリーに含まれる栄養素の中で、含有量の多いものは以下のようになっています。
ビタミンK
ビタミンC
葉酸
ビタミンE
パントテン酸
ビタミンB6
β-カロテン
クロム
スルフォラファン
それぞれの栄養素を与えることで、愛犬にどんなメリットがあるのか見てみましょう。
ビタミンK
ビタミンKは、血液の凝固に欠かせない栄養素です。
緑黄色野菜や卵黄、魚粉などに含まれ、通常、総合栄養食のフードを与えていれば足りなくなることはないものの、抗生物質の長期投与などで消化管内での合成が抑制されると欠乏することがあります。
ビタミンC
ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持、腸での鉄やカルシウム吸収、免疫にかかわる白血球の作用増強など様々な役割を担っています。
ガン細胞の抑制にも効果があるとされ、ガンの治療の一つとして用いられることもあります。
犬の場合、ビタミンCは体内で合成できますが、合成能には限りがあるため、ある程度食事から摂る必要があるのではないかと言われています。
総合栄養食を主食として食べさせている場合、不足する心配はありませんが、ビタミンCは水溶性ビタミンと呼ばれ、体からすぐに出て行ってしまうため、果物や野菜で摂ることで、健康維持に役立ちます。
ブロッコリーのビタミンC含有量は、レモンを上回っており、日々のトッピングやおやつとして積極的に取り入れていきたい野菜です。
葉酸
葉酸は、造血にかかわっており、不足すると悪性貧血や食欲不振、成長抑制などを引き起こします。不安定な栄養素で、フードの加工・貯蔵過程で分解されてしまうため、ドッグフードでは、葉酸が添加されています。
過剰症になることはないため、毎日、充分な量を摂取することが推奨されています。
ビタミンE
ビタミンEは、抗酸化作用をもつ物質として知られています。
皮膚や粘膜にはたらきかける他、肝臓の機能回復などに役立ちます。
全身の細胞の健康維持に不可欠なビタミンです。
パントテン酸
脂質やタンパク質の代謝を助けます。
善玉コレステロールと言われるLDLコレステロールを増やすはたらきがあります。
ビタミンB6
タンパク質の代謝に不可欠なビタミンです。
また、神経伝達物質の合成にも関与しています。
免疫機能を正常に維持したり、皮膚や粘膜の健康維持を助けるはたらきもあります。
β-カロテン
犬は、β-カロテンを体内でビタミンAに変換することができます。
ビタミンAは、粘膜の機能や視覚を維持するなど重要なはたらきをしています。
また、粘膜を健康に保つことは免疫力アップにも繋がります。
ビタミンAは、脂質と一緒に摂ることで吸収率が高まるため、ブロッコリーを与えるときは、肉と一緒にフードにトッピングするのがおすすめです。
クロム
クロムは、必須ミネラルですが、それが判明したのは最近のことで、未だに研究途上のミネラルです。
子牛では、輸送によるストレスを緩和することが知られており、免疫力を高めることに関連するミネラルなのではないかと言われています。
また、インスリン分泌を促進し、糖尿病予防に有効とも言われています。
スルフォラファン
スルフォラファンは、植物に含まれる天然化学物質、ファイトケミカルの1種です。ファイトケミカルは、タンパク質、脂質、食物繊維、炭水化物、ビタミン、ミネラルに続く第7の栄養素とも呼ばれ、注目されています。
スルフォラファンについては、データが充分でないものもありますが、試験管内のデータや動物実験では、ピロリ菌に対する殺菌作用があるとの報告やラットのガンの発生を抑制したとの報告もあり、今後の研究が期待されています。
犬に与えていいブロッコリーの量はどれくらい?
ブロッコリーは低カロリーの食材で、サラダに入っているくらいの中サイズのもので、約10gカロリーは約3kcalです。
おやつとして食材を与えるときの目安として、肉・魚・果物などは、食事全体のカロリーの1~2割とお話することが多いです。
ただ、野菜に関しては、それだと繊維の摂り過ぎでお腹が緩くなってしまうことがあります。
野菜の場合、まずは食事のカロリーではなく、食事量の1割程度を目安に与えてみましょう。
それでお腹の調子に問題がなければ、他の食材と同様にカロリー計算で2割程度までであれば与えて構いません。
便の状態を見ながら調整しましょう。
栄養バランスを気にする場合は、総合栄養食のフレッシュフードをトッピングするのもおすすめです!
おすすめのフレッシュフードは、こちらの記事でまとめているので参考にしてください。
持病がある犬にブロッコリーを与えてもいいの?
持病があるワンちゃんにもブロッコリーを与えて良いのか気になっている飼い主さんも多いと思います。
ここでは、ブロッコリーを食べさせても良いのかどうか、よくご質問いただく病気を取り上げて解説します。
腎臓病
腎臓病に配慮が必要な主な栄養素としては、タンパク質、リン、ナトリウムがありますが、ブロッコリーはこれらの栄養素の含有量が非常に少ないため、特に気にせず与えて大丈夫です。
尿路結石
ワンちゃんの結石の主な種類として、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石があります。
ストルバイト結石は、療法食を与えて尿のpHを調整することが大切なため、療法食以外の食べ物は、結石が無くなるまでは避けることが望ましいです。
シュウ酸カルシウム結石は療法食では溶けないため、水分摂取量を増やすことが重要であり、多くの食材はおやつとして少量なら摂っても良いとお伝えすることが多いです。
しかし、シュウ酸カルシウム結石の場合にもブロッコリーなど野菜の一部は注意が必要です。
ブロッコリーは、ビタミンCを多く含むため、体内でのカルシウムの吸収を促進します。
カルシウムは、シュウ酸カルシウム結石を形成する要因になります。
ブロッコリー単体で与えていて、少量であればほとんど問題になることはないものの、カルシウムを多く含む食材を摂っていた場合、結石が悪化する可能性があります。
シュウ酸カルシウム結石と言われたワンちゃんは、おやつにブロッコリーを与えることはやめましょう。
膵炎
膵炎の既往歴があるワンちゃんは、低脂肪食が推奨されます。
ブロッコリーは脂質が少ないため、与えて問題ありません。
下痢
下痢など消化管疾患の場合、食物繊維を控えた方が良いことが多いです。
ブロッコリーは、食物繊維が多いため、下痢が治まるまでおやつやトッピングとして与えるのは控えましょう。
甲状腺機能低下症
ブロッコリーやキャベツなど「アブラナ科」の植物には「グルコシノレート」という物質が含まれています。このグルコシノレートには、甲状腺ホルモンの分泌を妨げる働きがあることが知られています。
しかしながら、体に影響するのは、ブロッコリーを大量に食べた場合であり、通常のトッピングやおやつに与える程度であれば、まず悪影響を及ぼすことはありません。
まとめ
ブロッコリーは、ビタミン・ミネラルなど栄養素が豊富な食材です。
単独で与えることで嵩増しになり、ダイエットにも役立ちますし、お肉と組み合わせることで、吸収がよくなり、栄養補給にも最適です。
食物繊維が豊富なので、便の状態を見ながら、うちの子にとっての適量を見つけてあげましょう。